金属アレルギーなOLの業務外報告

全てのストレスを受け流し、気ままにゆるく生きる意識低めなOLの雑記。

それは単なる記憶の再生か、死者の復活か。【失われた過去と未来の犯罪】著者:小林泰三


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魂とは、身体に宿るのだろうか。

記憶が価値観を形作るなら、それは人格、即ち魂ではないのだろうか。

では、記憶を丸ごと外部メモリにコピーして、他人の身体に入れたらどうなるのだろう?

他人の身体と、他人の記憶。

それは一体、”誰”なのだろう??

 【失われた過去と未来の犯罪】著者:小林泰三

女子高生の結城莉乃は、自分の記憶が10分ともたないことに気が付いた。いち早く状況を理解した莉乃は急いでSNSに書き込む。

「全ての人間が記憶障害に陥っています。あなたが、人類が生き残るために、以下のことを行なってください」。

それから幾年。人類は失った長期記憶を補うため、身体に挿し込む「外部記憶装置(メモリ)」に頼り、生活するようになった。

「わたし」の中には、なぜか何人分もの記憶、思い出が存在している。

「替えメモリ受験」をしようとした学生の話。

交通事故で子供を亡くした父親の話。

双子の姉妹の話。

メモリの使用を拒否する集団の話。

謎の「声」に導かれ、「わたし」は自分の正体をついに思い出す…。

物語の終幕に、「進化の果て」が浮かび上がる。 

【ブラックSFミステリ】なんて、惹かれるに決まってる

既に帯が煽っている。ワタシを。

こんなの面白いに決まっているじゃんね、小林泰三さん好きなんだから。

相変わらず物語がテンポよく進み、文字数の割にはあっという間に読んでしまいました。テーマは重いんだけど、運びは軽やか。このバランスが絶妙なのです。

身体と記憶を繋ぐものが魂だと思っていた

漠然と。

いや、具体的に説明しろって言われても無理なんだけど。ただなんとなく、ワタシはそう思っていたの。でも、この物語を読んだら自信が無くなった。

記憶がこんなにも重要な要素だったなんて。いや、考えてみたら当たり前なんだけど。

人格って、記憶がなければ成り立たないよね。

脳が重要なのは、記憶を司るのが脳だからだ。

記憶の積み重ねで価値観が生まれて、その価値観を基準に物事を判断し、人格が形成される。

ではこの過程で、身体というものは人格に対して、どの程度影響を及ぼすのだろう。脳そのもののスペックを含めて、身体というものは人格に影響を与えるのだろうか?

 

例えばワタシの恋人が死んだ場合に、彼の記憶を丸ごと外部メモリに移植できたとして、それを他人の身体で再生できたら…?

その他人は彼が生まれた時からの記憶を持ち、彼の価値観で物事を判断し、彼のようにワタシを愛する。彼と寸分違わず、想い出も共有している。

それは一体、”誰”なのだろう?

脳がフル回転する小林泰三ワールド

いつもいつも、独特の世界観にやられる。一瞬頭が混乱するので、まずは一呼吸。

そしたらもう、あっという間に引きずり込まれる。

時空の狭間に堕ちて、知らない世界に放り込まれるみたいに。

どーでもいいけど、いつも表紙がツボなんですよね。

 

そんな感じで、本日ワタクシからは以上でございます。

お疲れ様でした!

 

 

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