雨と風を散々叩きつけ、
嵐は足早に去っていった。
まるで夏も一緒に連れ去ったのかと思うほど。
夜の空気はひんやりと冷気を帯びて気持ち良い。
身体に心地よい風を感じながら、
ワタシは久しぶりに1人歩いた。
焦りも不安も気怠さも。
全て連れ去ってくれそうな風に流され。
ただぼんやりと歩き続けた。
穴が開いた。
先日、約8年共に暮らした小さな家族が死んだ。
彼女は身体こそ小さかったが、
ワタシにとっては大きな存在だった。
唯一共に暮らしていた家族。
言葉では表しきれないほどの喪失感。
泣いても泣いても涙は枯れなかった。
目が開かないほど瞼が腫れた。
毛細血管が切れたのか、腫れた瞼は紫色だった。
自宅がこんなにも無機質な場所だとは知らなかった。
仕事から帰っても、迎えてくれる彼女の姿はない。
そんなこんなでブログどころではなかった。
引きこもりだったはずのワタシは、すっかり家に帰るのが嫌になった。
帰る度に辛いのだ。
いつも彼女が居た場所を見て、涙が止まらなくなる。
どうしようもないほどの喪失感に襲われる。
家には帰りたくない。
視界の端に、彼女の気配を捉えてしまう。
脳が錯覚する。
いつも通り、彼女がそこに居るのだと。
仕事の帰りも予定を入れた。
翌日が仕事でも夜中まで出歩いた。
自炊なんかすっかりやめて、毎晩誰かと外で食事した。
定時で会社を飛び出していたワタシが。
1本でも早い電車に乗り、1秒でも早く家に帰るよう努めていたワタシが…。
それでも夜中に帰ると、彼女の遺骨を抱えて毎晩泣いた。
そのまま溺れてしまいたかった。
眠る時も、枕の隣に置いていた。
生前彼女がいつもそこで寝ていたから。
睡眠不足が続いているのに、
毎朝目覚ましよりも先に目が覚める。
睡眠のリズムは完全に崩れているし、
ワタシは無意識に警戒している。
もう二度寝をしても、起こしてくれる彼女はいない。
もう10日ほど前の出来事だ。
流石に少し、気持ちが落ち着いてきた。
そうして少しずつ、日常を取り戻さなければ。
甘えてばかりはいられない。