金属アレルギーなOLの業務外報告

全てのストレスを受け流し、気ままにゆるく生きる意識低めなOLの雑記。

左右対称への異様なまでの執着【シンメトリー】著者:誉田哲也


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ストロベリーナイト】から始まる姫川玲子シリーズの第三弾。

ここへ来て、急に短編集。こういうショートな展開も意外とよい。姫川警部補、色々思いつつやはり好きである。

 【シンメトリー】著者:誉田哲也

短編が7作品収録されている。

読む前に文庫本をつまみ上げ、『7作品も入ってる割には薄くね?』と思ったりもしたのだが、これはこれで意外と良かった。

このシリーズの長編作品は例えるなら、連日ワイドショーで報道されるような凄惨な事件にスポットライトをあてている。そして本作のような短編は、それ以外の日常にありふれた些細な(と言うと語弊があるが)事件にスポットライトをあてている。そんな感じがする。

美しいシンメトリーをご堪能あれ。

 1.東京

姫川警部補が、まだ本庁の警部補になる前のお話。

品川署、強行犯係。巡査刑事、姫川玲子25歳。

事件は品川所管轄内、高校、屋上のプールでおこる。

死亡したのは栗原知世、水泳部部員。15歳の一年生。

夏休みの練習日、部活後に転落死した。目撃者は無し。

柵の高さは約1.2メートル。指紋は不自然の向きのものが1つのみ。その他足跡など痕跡は一切なし。事故か自殺か?それとも殺人か??

知世の転落の真相と、少し悲しい真実が明かされる。

2.過ぎた正義

姫川は、川越少年刑務所を訪ねようとしていた。駅からの道のりは、徒歩で20分ほど。

あの男なら、どのルートを辿るのか。そんなことを考えながら、うんざりする日差しに炙られて、今日も道を辿る。

【天の裁きがないのなら、一体誰が裁いたのかと、つい考えたくもなるというもんじゃろう】

國奥の言葉が蘇る。

少年法、精神鑑定。何かと理由をつけて、その罪は軽くなる。

刑事の正義はどこへ向かうのか? 少年の罪を裁くのは誰…!?

3.右では殴らない

姫川さん、やっぱり好きだなぁ…と思わされる一作。

劇症肝炎で亡くなった遺体から、覚醒剤が検出された。同じ条件の遺体が、都内で他にも発見される。仮に中毒よりも先に劇症肝炎を引き起こすような新種の薬物が存在するとしたら、大変な事態だ。

國奥の考察を念頭に捜査を開始した姫川は、一人の女子高生に行き当たる。

社会とは、法律とはなんなのか。

当たり前のようにそこにある、秩序とは―― 

4.シンメトリー

表題にもなっている本書のメイン作。

JRで起こった、列車の脱線事故。

十両編成の、前から四両目。それが斜め、上り下りの両線にまたがる状態で停止している。左右は切り立ったコンクリートの壁。少し先には陸橋。線路は周りの土地よりもだいぶ低い、溝のような場所を通っている。しかしその溝を、四両目が塞ぐ形で停まっている。 

駅員が見たその光景を、私にはやけにリアルに連想した。その場所が、すぐに思い浮かんだからだ。同じ情景を、私は知っている。北区某所。馴染みのある線路だった。

事件はいつも、少し悲しい。

それでも姫川は、犯人を追い詰める。刑事として、犯人を捕まえる。

5.左だけ見た場合

板橋区のアパートにて、手品師の男が殺された。吉原秀一、48歳。

死因は胸部、腹部、背中を計9ヶ所刺されての外傷性ショック死。内一つは心臓に達しているので、これが致命傷になったと考えられる。

現場には、害者の折りたたみ式ケータイ電話が転がっていた。それには045、666と入力されていた。これは主に、横浜市の中区で使用されている番号だが…?

姫川たちはケータイのメモリーに登録されている人物たちを虱潰しにあたっていく。

周囲から超能力者だと思われていた、吉原の死の真相とは??

6.悪しき実

北区のアパートにて、男が死んでいる。そう110番通報してきた住民の女が消えた。

警官が現場に駆けつけると、通報通り部屋には遺体があった。首にはロープが巻かれていた。

監察医の話では、ロープはぐるっと首の周りを一周して、喉の前で前で捻って交差しているので、自分でやろうと思えばできる絞め方だし、誰かがやったというのなら、そういう風にも見えると言う…。

消えた女を見つけ出し、署に連行すると、『亭主を殺した』と彼女は言った。しかし彼女の戸籍は独身だった。彼女が背負おうとした罪は、一体何なのか??

7.手紙

姫川が、捜査一課に異動するキッカケになった事件。

目黒区の公園で、40代のOLが刺殺体で発見された。彼女は個人で周囲の男に金を貸し付けており、返済できない相手には肉体関係を迫っていたという。

捜査をしていく中で、彼女がインターネットのあるサイトに頻繁にアクセスしていたことが判明する。そのサイトで、彼女は一体何をしていたのか?彼女との死との関係は??

短編集【シンメトリー】のまとめ

 『ストロベリーナイト』から始まる姫川玲子シリーズ初の短編集だった本作。

日常に近い部分から、姫川玲子の人となりが垣間見える一冊となっている。端的に言ってしまうと、姫川玲子への高感度が上がる作品集だ。

彼女がどういう考えで事件を追い、犯人と向き合っているのか。

長編作品では見えなかった部分を垣間見ることができで、興味深く読むことができた。

短編だからって読み飛ばさなくて良かったw

 

そんな感じで、本日ワタクシからは以上でございます。

お疲れ様でした!

 

 

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