絞殺されそうになったことのある女性はいるだろうか?
あまりいない気がする…。しかしワタシの答えはYESだ。
自分の気道が極限まで絞られた時のあの間抜けな音を、ワタシは一生忘れられないだろう。
あの男は確かにワタシを殺そうとした。
【殺戮にいたる病】著者:我孫子武丸
永遠の愛をつかみたいと男は願った――
東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねるサイコ・キラーが出現した。犯人の名前は、蒲生稔!くり返される陵辱の果ての惨殺。冒頭から身も凍るラストシーンまで恐るべき殺人者の行動と魂の軌跡をたどり、とらえようのない時代の悪夢と闇を鮮烈無比に抉る衝撃のホラー。
倒叙ミステリーで叙述トリック
本の紹介を見れば犯人の名前は書いてある。
この小説は、犯人の視点から多くの殺人が鮮明に記載されている。何を思って殺すのか。どんな風に殺すのか。殺すことで何を得るのか。何か変わるのか。それとも変わらぬ何かを望むのか。
ヒヤリとする。あまりに克明で、あまりにリアルで。
にも関わらず世界はどこか不安定で、蒲生稔という男がいまいち掴めない。見えそうで見えないから、つい前のめりになってしまうのだ。
そして最期には、不安定な世界が一気に崩落する。自分だけが取り残される。
人の記憶の曖昧さ
人の記憶はあてにならない。日々の生活の中で、なんとなくわかってはいた事だけど…。ここまで曖昧だと、なんだか可笑しくなってくる。しかし笑い飛ばせることじゃない。決して大袈裟に誇張された表現でないことは、自分でも嫌という程理解している。
目撃情報というのは、どれくらい役に立つのだろうか。
バーテンが少し笑うのを聞いて、樋口は危惧を覚えた。大学院生だという言葉を聞いていたということは、その後二週間以上も経って、より大学院生らしく記憶をねじ曲げている可能性もある。人間が驚くほど記憶をねじ曲げてしまうことは、樋口は身に染みて知っていた。スーツを着ていたということを覚えていても、ではどんなスーツだったかと聞くと記憶をごちゃまぜにし、茶色だろうが黒だろうがどんなスーツもひとまとめに『グレー』にしてしまう。
仕事中にもよくあるのだ。
何気なく過ぎた日のはずなのに、あとで何かのトラブルが見つかって。【あれ、あの時どうだったっけ???】と、2~3日前の出来事を思い出そうとしても、時既に遅し。
なんとなく覚えている。前後のことは覚えている。それなのに、今必要な肝心なことだけ思い出せない。自分の情けない記憶力に絶望する。
些細なことをきちんと覚えている人は確かにいて、きっとそういう人は正しく脳みそを使っているんだろう。羨ましい…。見習わなくては。
まとめ
【リアルな猟奇殺人描写】に抵抗のない人は、面白く読める一冊だと思う。
ワタシのように【猟奇殺人もの】が好物のプチ変態は、お気に入りの一冊になるかも知れない。ワタシ自身も、最近読んだ本の中では1番印象に残っているし、面白かった。
因みに本物の殺人は全く好きじゃない。暴力反対。フィクションだから全力で楽しめることを忘れちゃいけない。当たり前だけど。
そんな感じで、本日ワタクシからは以上でございます。
オヤスミナサイ☆|)彡サッ