金属アレルギーなOLの業務外報告

全てのストレスを受け流し、気ままにゆるく生きる意識低めなOLの雑記。

1万円札の価値が魅せる幻。【紙の月】著者:角田光代


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これはヤバイ…。

今年読んだ小説では貴志祐介さんの【天使の囀り】がダントツトップの面白さだったけれども、角田光代さんの【紙の月】はワタシの中でトップを争う面白さだった。

 

【紙の月】著者:角田光代

お気に入りの小説が実写化されても見る気にはならないけれど、実写化されて話題になったものはあらすじが面白そうだと、原作を読みたくなる。

でもこれ、映画観ようかな…。主演が宮沢りえさんていうのがまたいいんだよね。(※顔が好き)

 ただ好きで、ただ会いたいだけだった―――わかば銀行のある支店から一億円が横領された。容疑者は、梅澤梨花41歳。25歳で結婚し専業主婦になったが、子どもには恵まれず、銀行でパート勤めを始めた。真面目な働きぶりで契約社員になった梨花。そんなある日、顧客の孫である大学生の光太に出会うのだった…。あまりにもスリリングで、狂おしいまでに切実な、傑作長編小説。各紙誌でも大絶賛された、第二十五回柴田錬三郎賞受賞作、待望の文庫化。

宮沢りえさん主演で映画化した時にCMが流れていたのであらすじを知っている人は多いはず。この小説はちょっと不思議で、あらすじを知っているから読んでいてドキドキするのだ。主婦が1億円を横領する。一体なぜ?どうやって…?

おおよそそんな大胆な行動をしそうにない彼女が、一体どうして他人のお金に手を出してしまうのか。

闇は、いつでもすぐ隣に潜んでいる。誰の隣にも、必ずある。そんな事をジワジワと感じさせてくれる物語。

 

事実と真実は、時にかけ離れていたりする

この本のあらすじに書かれている内容は事実である。梨花は、勤め先の銀行から横領したお金を年下の男に貢いでいた。

だけど違う。真実は違うのだ。本当に恐ろしいのは、事実より真実だ。

この物語が【41歳の主婦が年下の男の子に溺れ狂う恋愛小説】かと聞かれれば全然違う。そもそも梨花は、光太のことを本当に好きだったのか?一億という桁違いな金額を横領して貢ぐ価値のある男だと思ったのか?

答えはNOだ。多分違う。きっと違う。そういうことではないのだ。

彼女が欲しかったのはお金ではないし、きっと光太でもない。彼女が求めていたものは、もっと別の、全然違うものだった…。

物語の始まり

この小説は、最初から嫌な雰囲気で始まる。

岡崎木綿子。梨花の中学高校時代の同級生だ。

朝刊から抜き取ったチラシ類をテーブルに広げ、異なるスーパーマーケットのチラシつき合わせ、岡崎木綿子は赤ペンを手に、特売品の値を比較していく。

駅の反対側のスーパーではツナ缶と食パンが安い。こちら側のスーパーでは冷凍食品が四割引。隣町のスーパーでは肉類がみな三十パーセントオフ。まず隣町にいきユザワヤで生地を買い、スーパーで肉のまとめ買い、近所のスーパーまで戻って冷凍食品。自転車で回れば一時間もかからない。木綿子は、一週間ぶんごとに紙幣を入れてある封筒を手にして立ち上がり、窓を閉める。 

ー第一章の冒頭より抜粋ー

この光景は容易に想像できる。リアルに想像できる。しかしこの光景を想像して、彼女を裕福だと思う人はまずいないだろう。

こういう努力が必要な時もある。ワタシだっていつかそういう時が来るかもしれない。必要になれば勿論やるけれど、極力こういう状況にはなりたくないと言うのが心情である。

お金とは不思議だ。あんな原価30円程度の紙切れに一体何の価値があるというのか。否、価値はある。日本という国が保証する、大きな価値が。

 

ウシジマくんの名ゼリフを思い出す。

一万円の原価知ってるか?

約28円。金は価値と交換できる引換券だ。金自体に価値はねぇよ。

 

金は使ってこそ意味がある。

 

だから梨花は使ったのだ。一億円という大金を。

彼女は価値を得ようとした。自分の納得できる価値を。

 

まとめ

一億円という桁違いの大金を横領して世間を震撼させた梨花は、けれど決して特殊な女ではなかった。ごく普通の、ただの女性であった。

この物語が恐ろしいのは、誰もが梨花になる可能性を秘めていることだ。始まりは日常に落ちている、とても些細なことである。少しずつ、自分でも気付かないくらい少しずつ、進む方向を間違えると到着地点が大きくかけ離れてしまう。

梨花の友人の中條亜紀にしてもそうである。クレジットカードは便利なものだ。【お金を使う】という感覚がつい薄れてしまう。

楽しくショッピングをして、帰りにふと気付くのだ。

今日、いくら使った?

合計金額を改めて計算して、ゾッとした経験がある人もいるだろう。

便利なものは、使い方を誤ると予想外のとんでもない事態に陥ることもある。ワタシの知人にも、クレジットカードを持つのをやめてしまった人や、永遠に払いきれないであろうリボ払いの返済を何年も続けている人がいる。

彼(彼女)らは、いつから進むべき方向を間違え始めたのだろう。ワタシには知る由もない。

 

ご利用は計画的に!

 

 

本日、ワタクシからは以上でございます。

オヤスミナサイ☆|)彡サッ

 

 

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