今週のお題「読書の秋」
【クレジットカード】【自己破産】。
【お金】が原因で人生が転落した末路とは…。
衝撃なのは、この小説がが20年くらい前に書かれたものだということ。日本ていうのは案外、何も変わっていないんだなあ…。
【学校教育】はなぜ見直されないのだろう。【お金の教育】ってとても大切なのに。
【火車】著者:宮部みゆき
火車(かしゃ):火がもえている車。生前に悪事をした亡者をのせて地獄に運ぶという。ひのくるま。(広辞苑第三版)
休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すことになった。自らの意志で失踪、しかも徹底的に足取りを消して―――なぜ彰子はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか? いったい彼女は 何者なのか? 謎を解く鍵は、カード会社の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生に隠されていた。
なかなかボリュームのある一冊。
2つの視点から楽しめました。
視点1.現実に起こり得る【お金】の問題
本書、【火車】は一人の女性の壮絶な人生を読み解く物語です。女性の名前は『関根彰子』。事務職の28歳。結婚を約束した恋人がいる、ごく普通の女性。
そんな彼女が、一体なぜ突然に、自らの意志で失踪しなければならなかったのか。
彼女が歩んできた過去28年の人生を、本間は残された僅かな情報から必死に紐解いていく。
以前に『関根彰子』を担当していた弁護士の話は実に印象深い。
「一年ほど前に私が自己破産の相談を受けたケースなんですがね、二十八歳のサラリーマンで、その時点で、クレジットカードを三十三枚持ち、負債総額はなんと三千万円にまで達していました。彼の給料は、月額手取りで二十万円です。ほかに資産はない。これをどう思います?」
三千万――一介の地方公務員である本間には、退職金でもお目にかかれない額である。
「手取り二十万の人間が、なぜ三千万円もの借金をつくることができたのか。誰がそこまで貸したのか。どうして借りることができたのか。これが過剰与信、過剰融資ということですよ」
確かにそうだ。そもそも手取りが二十万円しかないのに、三千万円ものお金を借りれる事自体がオカシイ。なのに、現実にそれが起こっている。
「負債が膨らんでいく過程は、一般にはこうです。まず、クレジットカードを作る。便利に使う。ショッピング、旅行。カード一枚で手軽にできる。そのうち数が増えてくる。一般の勤め人なら、まず審査で引っかかることなどないし、 デパートでも銀行でもスーパーでも、どこでもカードを作れと勧めてくる。カード会員になれば、割引とか優待とか、さまざまな特典がついてくる。で、彼はカードの枚数を増やしてゆく」
そうやって今度は、ショッピングだけでなくキャッシングにまで手を出し始めるという。
【小説を読んでいる】という感覚を忘れそうになる。これは現実に起こっていることだ。
ワタシは実際に、クレジットカードを何枚も作ってリボのショッピング枠を限界まで使っている人を知っている。
まるで自分の口座からお金を引き出すように、クレジットカードのキャッシングで現金を引き出している人を知っている。
フィクションであってフィクションではない。【彼ら】は現実に存在する。
「ショッピング。キャッシング。便利に使い続ける。一度にどかっと使うわけじゃなく、少しずつだから、浪費しているという感覚もない。ところが、借財は借財ですからね。期日が来たら払わなければならない。溜まればだんだん財政が苦しくなってくる。たとえば、入社したてのサラリーマンで、仮に給料の手取りが十五万円だとしますと、支払い額が月二、三万なら払うことができます。四、五万だと苦しい。しかし、ちょっと油断をしていると、それぐらいにはすぐなってしまう。そこで、いきおい、キャッシングに頼るようになってくる。A社の支払いのために、B社のカードでキャッシングするわけです。これが始まると、あとはもう雪だるま式に借り入れが増えてきて、そのうちもうキャッシングだけではどうにもならなくなってくる。さあ、どうすると思います?」
考えただけでゾッとする。
そういえば、ワタシが出会った【彼ら】も、社会に出たて、二十代前半の若者たちだった。
お金の知識、お金に対する価値観や考え方。それらの基盤を整えることなく社会に出てしまうと危険なことになる。
知っておかなければならないこと、知っておいた方がいいことは無数にあるはずなのに、その殆どは学校教育の中で学ぶことができない。
なぜカリキュラムに組み込まないのだろう。二十年も前の小説の中で、宮部みゆきさんは【教育を徹底すること】と書いている。
二十年経った今、それは未だに実現されていない…。
視点2.失踪した一人の女性の謎に迫るミステリー
フィクション、一つの小説としても面白いことを一応申し述べておきます。
本書はとにかく失踪した『関根彰子』を捜す物語なので、彼女は一番の幹の部分です。誰よりも存在感のある彼女ですが、『関根彰子』というその人は殆ど出てきません。
この物語を読み進めていく過程で、ワタシは【愚行録を読んだ時のこと】を思い出しました。
あれは取材という形式をとっていましたが、なんだかちょっと似ている…。つまり、当事者ではなく、当事者の周りの人間から聞いた話で過去を形取っていくのです。
読み進めるほどに新たな真実がボロボロと溢れてきて目が離せなくなります。
ワタシは前のめりで読みすぎて、会社帰りに一度電車で最寄り駅を通り過ぎてしまいましたww
宮部さんの小説、久しぶりに読んだけどやっぱり面白い。
【火車】まとめ
【お金の授業】、是非とも学校で取り入れて欲しいです。
勉強になる本は沢山有るけれど、読書が好きな子どもばかりではないですし。
あ、因みにクレカ何枚も作ってリボ払いを限界まで使いまくってた友人は、昨年結婚致しました。その負債が結局どうなったのかは知らない…。てゆーか奥さんはしっているんだろうか?
最近は【過払い金返還請求】なんていうものが大流行しているけれど、あくまでも【過払い】分が戻ってくるだけで、借金がチャラになるワケじゃないし、法定内の利息はキッチリとられるわけで。
お金に流されないように気をつけなければと改めて思った次第であります。
そんな感じで、本日ワタクシからは以上でございます。
またね~☆|)彡サッ