週末は3泊留守にしていて、連休の明けた火曜日。
心地良い秋晴れの朝。
久しぶりに仕事へ行こうと玄関を開けると、噎せ返るような金木犀の香りが鼻をつく。
約1年、すっかり忘れていたはずなのに…。
今年もまたこの季節がやってきた。
私のキライな、金木犀の香り。
捨てたはずの自分の過去を、嫌でも思い出す。
地面に散った鮮やかなオレンジが、返り血のようで気持ち悪い。
過去を捨てることはできないのだと、嫌でも思い知らされる。
私は奥歯を噛み締めて、早足で逃げるように玄関を抜けた。
今の部屋に住んで5年になる。
同じ部屋に2年以上住んだことがなかった私にとって、この部屋の快適さは前例がないほど素晴らしいものだ。
唯一の難点が、正面玄関の向かいに立派な金木犀があること。
私がこの世で1番嫌いな木が植えられている。